第56回日本神経学会学術大会に参加してきました 横関明男

1.はじめに

平成27年5月20日(水)~23日(土)、朱鷺メッセおよびホテル日航新潟にて、第56回日本神経学会学術大会が開催されました。本会は、毎年春に行われる全国の神経内科医が一同に集まり、最新の治療や研究が発表される会です。今年は新潟での開催ですので、是非とも当院からも演題を提出したいと思い、今回は「当院の過去10年間における多系統萎縮症の生命予後の検討」という演題名で発表して参りましたので、概要を紹介させていただきます。

2.多系統萎縮症とは

多系統萎縮症は、原因不明の神経難病の一種です。症状も、1.体のふらつき、歩きにくい、しゃべりにくい、ろれつが回らない(小脳の症状)、2.手の震え、関節が固くなる(パーキンソン病に類似の症状)、3.便秘、おしっこが出にくい、起立すると血圧が低下する(自律神経の症状)が起こります。この病気は、残念ながら有効な治療法が確立されておらず、発症から約5年で歩行は困難でベッド上での生活を余儀なくされ、発症後8年くらいで他界される方が多いです。

3.今回の研究テーマについて

多系統萎縮症は、パーキンソン病など他の神経難病と比較して「突然死」が多いという特徴があります。そこで、実際に当院に入院され、他界された患者さんの死因について、解析してみました。

4.研究結果

(1)死因

今回、過去10年間に26名の多系統萎縮症の患者さんが当院で他界されておりました。その死因は、肺炎と突然死がそれぞれ27%(7名)と最も多いという結果でした。

(2)突然死に関与する因子

突然死とは、発症が予測できない突然起こる死亡のことを意味します。今回の研究では、突然死に関連する因子の解析を行ったところ、stridorと呼ばれる特異な呼吸異常を生じる症例では、突然死を発症しやすいことが分かりました。
当院の解析で、stridorを起こした症例では、気管切開といって、のどに空気の通り道の穴を空けてある患者さんもいることから、突然死は単に空気の通りが悪くなって心肺停止を起こしたというものではなく、脳からの呼吸や心臓への命令が途絶えたことにより、心肺停止を起こしたのではないかと推測しています。

5.まとめ

今回の研究では、
(1)多系統萎縮症では、突然死を起こす割合が高い
(2)stridorを起こす多系統萎縮症の症例では、突然死を起こす可能性が高い可能性がある
ことが、明らかとなりました。

神経内科 横関明男

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